Sep 12, 2013

130912 MUSICMAN-NET 土屋望 インタビュー(少女時代言及部分)

Musicman's RELAY > 第114回 土屋 望 氏

土屋:そうですね。でもアーティストのスタイルに合わせて方針を決めたり、戦術を研究したりすることは、どのアーティストでもやってきたことなので、少女時代のときも同じように、まずは当時世界で流行っていたダンスミュージックを聴きまくりました。

今回は日本と韓国のカルチャーの違いはもちろん、エスエムというのは非常に特徴のある優秀なクリエイティヴカンパニーなので、その流儀を体感出来るまでどんどん自分を追い込もうと決めていました。何度も韓国に足を運び、主に本社の制作スタッフに会って話を聞いて、少しでもヒントを得ようとしましたね。

−−音を作るのは韓国でどこまでやって、後は日本で、とか役割分担みたいなものはあるんですか?

土屋:そこには決まりはありませんが、まず、韓国のヒット曲の日本語カバーというのが入口にあります。最初は日本語の歌詞ですよね。歌詞にこだわり続ける日本と、歌詞をダンスミュージックのツールとして扱う韓国のカルチャーが正反対だったので、そこがまずチャレンジでした。韓国は内需が小さい国なので、外にマーケットを求める。音楽だけではなく全てがそうでしょう。そうすると音楽で言えば「歌詞にこだわっているうちは、国境は絶対に越えられない」と分かってくる。「ダンスだったら言葉は通じなくても観れば分かる」という非常に明快な理屈。エスエムはそういう戦術戦略を最初から採ったのです。

ここが日本との最大の相違点でしょう。一般的に歌詞の意味が分かると人間の集中力はストーリーを拾っていきます。日本人は世界で一番歌詞にこだわりますから、音楽の中の言葉を聴く能力が高い。だから、日本のファンに本当の意味でのエスエムカルチャーや少女時代の真の魅力を提供するために、いかにサウンド全体を邪魔しない日本語詞にするか、かなり研究しました。これは若いスタッフのアイデアですが、最初に少女時代の韓国語の歌詞を聞いて、音で聞こえた通りにカタカナでメモります。メモった文章はもちろん意味が分からない呪文みたいなものですが、そのまま作詞家に渡すのです。

−−意味ではなくて音を提示したんですね。

土屋:そうです。作詞家もびっくりですよね。「優れたクリエイティブは制約の中にこそ宿る」とか訳の分からない事をいっぱい言って説得して(笑)。

−−(笑)。

土屋: 基本的にJ-POPは「言葉で口説いていく」音楽ですから、そこからの転換はチャレンジングでした。K-POPは「体で口説いていく」わけですからね。

−−なるほど…K-POPの戦略ってしたたかですよね。

土屋:欧米に近いですね、考え方自体は。とにかくファイトしていく。

−−日本のアーティストとやっぱり違いますか?

土屋:全然違いますね。これも欧米に近いのかも知れませんが、個人個人のスキルとメンタリティのレベルが非常に高い。日本人は集団単位で鍛えていきますが、欧米はまず強い個人を作って、その強い個人が集まった集団を鍛えるというカルチャーです。韓国もそれに近いものを感じますね。エスエムは完全に欧米スタイルです。



プロフィール
土屋 望(つちや・のぞむ)
音楽プロデューサー / (株)エスエム・エンタテインメント・ジャパン CBO
1964年8月30日東京都生まれ 
1989年 早稲田大学社会科学部卒業、同年、東芝EMI株式会社入社、邦楽制作ディレクターとしてICE、忌野清志郎他を担当。
1998年 東芝EMIの子会社として「メロディー・スター・レコーズ株式会社」を設立、2つのレーベルの運営に携わる。「Virgin Records TOKYO」では音楽プロデューサー、「Virgin DCT」ではDreams Come Trueの制作ディレクターを担当。
2000年 メロディー・スター・レコーズ株式会社代表取締役に就任、同年2月「Virgin Records TOKYO」から鬼束ちひろがデビュー、音楽プロデュースを担当。
2006年 株式会社247Music取締役に就任
2010年 株式会社エスエム・エンタテインメント・ジャパンと契約、BoA、少女時代、SHINee他の音楽プロデュースを担当、現在に至る。

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